賃貸物件の退去時の費用の相場は?
借主と貸主の費用負担区分を徹底解説します
賃貸物件を退去する際には退去費用がかかります。
退去の際に余分に請求されないか心配される方も多いはずです。
退去費用の相場を知る事で、相場以上の金額を請求されないようにしましょう。
また、原状回復費用はどこまで負担しなければいけないのかも気になるところです。
この記事では、退去時にかかる費用(退去時費用)の相場や原状回復費用を誰が負担するのか、退去時費用を抑える方法などについて詳しく解説していきます。
退去費用とは
そもそも、退去費用とは、何の事を指しているのでしょうか?
退去費用は、大きくわけて「ハウスクリーニング費用」と「原状回復費用」に分けられます。
ハウスクリーニング費用とは
ハウスクリーニングとは、退去する際に専門業者を入れてお部屋を掃除する事です。
賃貸物件の場合は、どんなに綺麗に部屋を引渡ししたとしても「ハウスクリーニング」を実施します。
その費用は借主の費用負担となります。
ハウスクリーニングの内容としては
- 部屋の清掃
- ワックスがけ
- クロスの拭き上げ
- キッチン・風呂・トイレなど水回りの清掃
- ベランダの清掃
- 排水口の洗浄
などが挙げられます。
また、エアコン洗浄もハウスクリーニングの一部ですが料金は上記項目とは別になる場合が多いです。
ハウスクリーニングにかかる費用の相場
ハウスクリーニングにかかる費用相場は以下の通りです。
間取りタイプ | ハウスクリーニング費用 |
---|---|
ワンルーム、1K | 15,000~30,000円 |
1DK、1LDK | 20,000~40,000円 |
2DK、2LDK | 30,000~50,000円 |
3DK、3LDK | 50,000~80,000円 |
4DK、4LDK | 70,000円~ |
また、上記金額はあくまで目安です。
エアコンクリーニング抜きで上記金額以上の場合は少し割高かもしれません。
原状回復費用とは
賃貸物件を退去する際は、借りた時の状態にして、貸主に返さなければいけません。
これを「原状回復」と言いいます。
主な原状回復の項目としては
- 畳の交換
- ふすまの張り替え・天袋の張り替え
- 壁紙の張り替え
- 床材の張り替え
- 鍵の交換
などがあげられます。
貸主・借主の費用負担区分
上記の「ハウスクリーニング費用」と「原状回復費用」を足した額から、借主が負担すべき費用と貸主が負担すべき費用を割り振りします。
主に借主が負担する項目
借主負担となる項目は故意(わざと)過失(わざとでなくとも)によって生じた破損や汚損などです。
主に以下のような項目は借主負担となります。
- 鍵を紛失したことによる鍵の取り換え
- 適切なメンテナンスを行わなかったことによる設備の故障
- 設備などを適切に使用しなかったことによる汚損など
- 借主の故意や過失による内装の汚損
- 物をかけるための釘穴、ネジ穴
- ペットによる傷や臭い
- タバコが原因のクロスの張り替え費用
- 引っ越し作業時の傷や汚損
- 不注意によって雨水が入り込んだり、水をこぼした場合の汚損、劣化
- 結露などによる壁紙などのカビ
※借主には善管注意義務というものが発生します。
善管注意義務とは民法第400条の「善良なる管理者の注意義務」になります。
簡単に言うと、他人のものを借りているので退去するまで大切に使用しなければならないという事です。
主に貸主が支払うべきもの
貸主側の負担になるものは、経年劣化や自然摩耗など、正当に使用していただけでも発生してしまう劣化や汚損などです。
主に以下のような項目は貸主負担となります。
- 経年劣化による設備品の交換、クロスの張り替え
- 経年劣化による畳の交換
- クロス、ふすまなどの自然変色(日焼けなど)
- 家具の設置によるカーペットなどのへこみ
- 次の入居者確保のための工事
- 地震や台風など自然災害による破損
各項目別の費用目安
原状回復の金額は目安は以下の通りです。※費用は参考の値段になります。
工事内容 | 単位 | 単価(税別) |
畳表替え | 1帖 | 4,000円 |
襖貼替 | 1面 | 3,500円 |
天袋貼替 | 1面 | 2,500円 |
デジタロック電池交換 | 1式 | 2,000円 |
鍵シリンダー交換 | 1式 | 10,000円~25,000円 |
シャワーカーテン | 1枚 | 3,000円 |
クロス貼替 | 1㎡ | 1,300円 |
クッションフロア貼替 | 1㎡ | 3,300円 |
フローリング貼替 | 1㎡ | 10,000円 |
フロアタイル貼替 | 1㎡ | 4,800円 |
網戸張替(掃き出し窓) | 1枚 | 3,200円 |
網戸張替(腰窓) | 1枚 | 2,700円 |
不動産会社によって料金異なる
工事の費用はあくまで目安です。また、工事の費用は管理会社によって異なります。
私の会社は分離発注をしている為、比較的金額は安い方かと思いますが、下請けに丸投げしている管理会社は費用が高くなります。
また、特殊な工事の場合には、専門の職人さんが必要になる場合がある為、料金が高くなる場合もあります。
地域によって料金が異なる
原状回復費用は、地域によって異なります。
例えば、クロスの単価などで言えば関東周辺エリアでは1㎡当たり1,300円前後、安いと言われる岐阜などでは1㎡当たり900円前後となります。
材料の仕入れ値や地域の相場などによって料金が変わってしまうのです。
賃貸借契約で注意するべき特約
賃貸借契約では、予め借主が負担すべき項目を、特約事項にて定めている場合があります。
退去時に関係する費用としての特約は「原状回復特約」と「敷引き特約」に別けられます。
原状回復特約
原状回復特約とは、予め退去時に借主が負担すべき項目を賃貸借契約書で定めているものです。
原状回復特約の例としては
- ルームクリーニング費用
- エアコンの洗浄費用
- 排水口の洗浄費用
- 畳の交換費用
- 襖の貼替費用
- 鍵の交換費用
- エアコン洗浄
などを「経年劣化や自然損耗に関わらず借主の負担とする」旨が定めれれています。
ただし、全ての特約が有効な訳ではありません。
あまりにも借主に不利な内容であれば無効になる可能性が高いです。
敷引き特約(敷金償却)
敷引きとは、規約時に預け入れた敷金の一定額を差し引きする事です。
特約で「敷引き1ヶ月」と契約書に記載がある場合は、退去時に敷金から家賃の1ヶ月分の金額が差し引かれるということです。
賃貸借契約はあくまで契約の自由の原則が適用されます。
契約自由の原則とは、公の秩序や強行法規に反しない限り、当事者が自由に締結できるという民法上の基本原則のことです。
契約前に、どのような特約があるかチェックしておく事が必要です。
敷金と退去清算金の違い
賃貸借契約は、契約時に「敷金」や「退去清算金」等の名目であらかじめ預り金を貸主に預託する場合が多いです。敷金と退去清算金は、清算方法などが異なります。
詳しくは下記にて解説致します。
敷金とは
敷金は、法律で「賃料その他の賃貸借契約上の様々な債務を担保する目的で賃借人が貸借人に対して交付する停止条件付きの返済債務を伴う金銭※」と定められています。
わかりやすく説明すると、賃貸物件の家主が家賃の滞納リスクや、人に貸すことで壊されたり汚されたりするリスクに対して補填・保全するために事前に預かるお金です。
そのため、リスクが生じなかった場合、つまり『「通常に使用した場合」には返金される』お金となります。
また、敷金は借主の退去費用にも充当されます。
退去時に行う原状回復費用の借主負担分を差し引きして余った部分は返却されます。
また、敷金を超えて費用が発生する場合は、残額を請求されます。
退去時清算金とは
退去清算金とは借主負担分の退去費用額を前もって計算して契約時に預かる金額です。
物件や管理会社によってその呼び方は違い「退去時修繕費用」や「退去時負担金」などとも呼ばれます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
敷金との大きな違いは返金の性質がないという事です。
敷金の場合は、費用が余ったらお返ししますが、退去時清算金は原状回復費用が余ったとしても返金されません。
もちろん、原状回復費用が超過した場合には請求されますが、少しくらい超過した場合には
請求されない場合が多いというメリットもあります。
国土交通省のガイドラインについて
退去費用の負担区分が貸主・借主であるのかは、国土交通省のガイドラインで定められています。
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインによると、原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧することです。
原状回復は「借りたときの状態に戻す」という意味ですが、ガイドラインに明示してある原状回復の定義は、「通常の使用を超える範囲の損耗や毀損の復旧」となります。
ガイドラインの見解で言えば、借りた当初の状態に戻す必要はないという事になりますが、契約書特約などで記載されたものは、特約が優先されるようです。
退去費用を抑える方法
相場より高額な費用を請求されていたり、相場より安く済ませたりしたい場合は、退去費用を抑える方法が気になりますよね。
いくつか、安くできる可能性がある方法を紹介します。
入居時に気になる場所をチェックしておく
賃貸物件を退去する時は不動産会社と一緒に部屋を確認します。このことを退去立会と言います。
退去立会の際は、借主が部屋や設備を損傷させていないかを確認しますが、元々あった傷なども証拠がなければ借主の負担にされてしまう場合があります。入居したらまず部屋をくまなくチェックして、不具合箇所があれば日付入りの写真を撮ったり、管理会社に連絡しておきましょう。
退去時のリフォーム費用等を交渉する
知らない方が多いのですが、管理会社に交渉することで退去費用を抑えられる可能性があります。
必ずしも成功するとは限りませんが、通常、借主が退去した後、借主と貸主の費用負担を決めてからすぐに原状回復工事に入ります。
次の募集をするにあたり、きれいな状態にしておかないと入居希望者の印象が悪くなる為です。
借主から退去費用の承諾を取れないと、原状回復の為の業者手配が取れずに困ってしまいます。
明らかに借主が悪いものはともかく、管理会社に言われたままではなく、ここは大家負担だと思うところは交渉してみるのも重要です。
あらかじめ掃除しておく
自分で掃除したとしても、ハウスクリーニング代金は必ずかかります。
なら、掃除する意味はないと思われるかもしれませんが、印象が違うと余分に請求される可能性が少なくなります。
特にクロスなどは目立つ汚れがあるのであれば拭き上げておくのが良いでしょう。
あまりにも汚れが目立つクロスは借主の費用負担になってしまいます。
逆に許容範囲であれば、経年劣化とみなされて費用は大家さん負担になります。
油汚れやクロスの電気焼け部分は、立ち合い前にはキレイにしておくといいでしょう。
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まとめ
退去時には使い方によっては、契約時に預け入れた敷金やクリーニング費用よりも多く請求されてしまう場合があります。
追加の費用を取られないために、また、敷金がかえってくるように退去立会の際は、きれいに使っていた事をアピールする事が必要です。
あらかじめ掃除をしておくことも重要です。
また、工事費用の相場や費用の負担の区分を知ることで、明らかに不当な請求も見抜けるようになるでしょう?
退去についてのトラブルに関してもお問い合わせ頂ければわかる範囲でお答えします。
無駄なお金を払わずに気持ちよく退去できるようにしましょう。